2022年03月13日
新居家住宅見学会レポ日記

京都市伏見区淀にある新居家住宅の見学会に参加しました。

新居家住宅は大正15年に建てられた洋館付き住宅で、国登録有形文化財となっている住宅です。
現在も新居さんの個人宅で普段は非公開ですが、見学会に参加することが出来たので晴れて内部を拝見することが出来ました。

この新居家住宅の見学会には過去に何度か応募していたのですが、中々抽選に受からず、3回目にしてようやく当選しました。過去に外観だけは見ていましたが。

洋館1階内部。比較的シンプルな内装ですが、雰囲気のある部屋です。
右側の棚の下は物入にはなっておらず、所有者様の不思議がっておられました。

奥のテーブルは後から購入されたものだそうですが、手前の椅子は当時の物だそう。

入り口方面。奥が玄関と和館です。

入口にあるカウンター。これは所有者様が後から設置したもの。照明は当時の物。

入り口部分のアーチ。

暖炉。タイルはなんと泰山タイル。貴重なものです。
次に2階へ。

2階部分。2階の窓にはステンドグラスがはめられています。

別角度から。

南側の窓のステンドグラス。

西側のステンドグラス。ステンドグラスは改修の際に外されていたのを再び戻したのだそう。
洋館は戦時中、久御山町にあった陸軍の航空隊の将校宿舎として使用されていたとのことで、以前は名前入りの服を掛ける棚があったそう。
お聞きした話では、久御山の航空隊が知覧へと向かう際、目立つ緑色の屋根の洋館の上空に来た際、翼を振って感謝の挨拶をして知覧へと向かったそうです。そう、知覧へ…
次に和館へ。

玄関を入り向かって左が洋館、そして向かって右が和館となります。この部屋は表の間。
元々は別邸として建てられたもので、普通は玄関からの導線は廊下へと繋がるのですが、新居家住宅は玄関を上がった取次の間からすぐに洋館と和館の部屋に直結し、来客をもてなすための造りだとか。
来客は近くの京都競馬場の来客をもてなす用途もあったらしいです。当時の競馬は高貴な紳士の社交場でしたので。

床の間。床柱はさすがの四方柾ですが、これだけのお屋敷に対して控えめで、本宅ではなく別邸だからではという理由が考えられるとか。

照明も当時のまま。

障子には矢の意匠が。新居家住宅の和館には矢を用いた装飾が多く見られます。

床の間平書院の欄間。

縁側奥の付書院。縁側奥に造るのは珍しい。
次に離れへ。

昭和12年に完成した離れも書院造風の数寄屋造の部屋ですが、遊郭の意匠を取り入れているため、遊び心のある部屋です。遊郭建築の意匠を取り入れたのは、近くに橋本遊郭があったのもあるのだとか。

向かって右側の天井は網代天井となり、分けられています。

床の間の横には塗り残し窓があり、通常の数寄屋建築や書院造の部屋とは違った造りです。
新居家住宅は元々別邸として建てられ、昭和19年に所有者様の先代が購入されたそうですが、本来は建物を取り壊して小さめの住宅に建て替える予定だったそうです。しかし、平成24年に京都市文化財保護課の勧めにより保存が決定。一部の改修を行い現在はこうして一般公開をする機会を設けるなど保存と周知に尽力されています。
私の実家も大正4年築の古い農家建築ですが、古い建物は今の生活事情から考えると使い勝手は悪く、また維持管理も大変。それを知っているだけに新居家住宅の所有者様の尽力は並大抵のものではないことは分かります。

新居家住宅の見学ついでに淀の河津桜を見てきました。まさに見ごろの満開で多くの人が駆け付け、中には美人のお姉さんをモデルに撮影会をしている人も。

河津桜の見ごろが過ぎた後は、いよいよ本格的に桜の季節ですね。