2025年09月15日
旧陸軍第十六師団司令部見学会レポ日記
京都市伏見区にある旧陸軍第十六師団司令部庁舎の見学会に参加してきました。
第十六師団は日露戦争後の本土駐留師団として明治38年に編成。激しい誘致合戦により、明治41年に深草村(現・京都市伏見区深草)へと第十六師団が設置されました。
第十六師団司令部庁舎は明治41年に完成。設計は陸軍省営繕課(具体的な設計者は不明)、施工は松村組と言われています。外観は古典様式ですが、装飾は控えめになっています。ただ内装は明治の洋館建築らしく華やかな装飾が多用されています。
戦時中は赤煉瓦の外観が目立つという理由から、全体にコールタールが塗られ真っ黒になりました。
戦後、第十六師団司令部庁舎は聖母女学院の所有となり現在に至ります。
2016年には国登録有形文化財となりました。現存している赤煉瓦の師団司令部庁舎は、十六師団司令部と近衛師団司令部のみです。
正面ファサード。正面部分には2本のイオニア式バットレス柱。ギリシャ様式の柱を用いた古典様式です。
見学は聖母女学院の職員の方の案内で各部屋を回るため、見学できない部屋もあります。
今回見学した部屋は上の見学箇所位置図にて記しています。以下、これに従って紹介します。
正面玄関を入った所にある�仝軸愼眸癲�こちらも古典様式でまとめられています。
玄関天井の座繰り。
玄関の左右には受付の窓がありますが、かなり高さがあります。
これは馬上から受付できるようにしたものです。
��中央階段。さすが明治建築らしく装飾がふんだんに施されています。
階段親柱の装飾。
一階廊下。
階段下は収納になっています。
その脇に屋根から降ろされた陸軍星章入りの鬼瓦等が置かれていましたが、これらは師団司令部庁舎の物ではなさそうです。屋根が改修された京都偕行社か解体された酒保の物でしょうか。
中央階段踊り場。
�Ｆ鶻�中央階段。
南側の脇階段。左側の梯子から屋根裏に入れるようになってます。
ここから南側の部屋に案内され、説明のビデオを鑑賞。
�て鶻�南西角の部屋の暖炉。それなりの広さがあり、重要な部屋の一つだったと思われます。
�テ鶻�南東の小部屋。副官とかの部屋だったのでしょうか。
��師団長室扉。師団長の部屋は2階正面にありました。師団長室だあって他の部屋より勢が尽くされています。現在は理事長室となっており見学不可となっています。
しかし、いつもお世話になっております盡忠報國様より師団長室の写真を提供していただきましたので紹介いたします。盡忠報國様が見学された2011年は内部見学が出来たようです。
師団長室内部。
師団長室の暖炉。さすが装飾が凝っています。
師団長室の座繰り。
組木の陸軍星章があしらわれています。
師団長室を後にして北側へ。
�Р餤勅次Ｆ鶻�北東角にある広い部屋。軍法会議(軍の裁判)が行われていた部屋と言われています。
会議室の暖炉
会議室のアーチ窓。
再び一階へと戻ります。
�┛豎�玄関南隣部屋。玄関に隣接した部屋で、右側に受付用の窓があります。
受付用窓から見た玄関。
暖炉。
床は当時のリノリウム床が残されており、当時の将校が佩刀していた軍刀の鐺の痕が残されています。
��一階部屋。�┐瞭醂戮良�屋です。
ここの部屋の暖炉は他と違い黒大理石製です。
��食堂。現在は会議室になっていますが、当時は食堂だったそうです。
内部は改装されており、扉くらいしか当時の面影はありません。
��炊事室。現在も給湯室として使用されています。
第十六師団司令部庁舎の当時の各部屋の用途はほとんど分かっていません。
判明しているのは、師団長室・会議室・食堂・炊事室だけのようです。
次に外周を見学。
師団司令部庁舎の北側側面入り口は車寄せ風の小屋根が設けられています。
第十六師団司令部庁舎背面。背面は装飾がほぼありません。
師団司令部庁舎の東側には京都偕行社への通用門が残されています。
敷地外から見た京都偕行社。現在、京都偕行社の建物はカトリックヌヴェール愛徳修道会として使用されており、見学不可となっております。また、かつて京都偕行社の右側には近年まで酒保の建物がありました。
カトリック伏見教会の敷地内になりますが、当時のコンクリート製の建物が残ります。
説明では弾薬庫と聞きましたが、衛兵所の武器庫と思われます。
また、その隣にあるこの建物も師団司令部時代の建物と思われます。
正門前には復元された歩哨舎があります。宇都宮の連隊の歩哨舎を参考に復元されたそうで、
現在は衛兵の代わりに警備員が目を光らせています(笑)
現在、第十六師団司令部の建物は、師団司令部庁舎・京都偕行社・武器庫・付属建物が残されていますが、独自調査＆盡忠報國様の聞き取りにより、師団副官の官舎が現存していることが分かりました。
師団副官官舎の位置図。
師団副官官舎の現状。
第十六師団副官官舎についてはこちらの記事をご覧ください。
※十六師団司令部 副官官舎の現存確認について
また、第十六師団司令部の東側には、かつて第十六師団長官舎がありました。
在りし日の第十六師団長官舎(※管理人撮影)
第十六師団司令部庁舎は現存する旧陸軍の師団司令部庁舎建築として貴重な存在であり、念願の内部見学を果たすことが出来ました。
